台風や大雪のニュースを見て、「もし停電したら、この家はどれくらい持ちこたえられるんだろう」と不安になったことはありませんか。停電したら、冷蔵庫の中身もエアコンもスマホの充電も止まります。電気が止まった瞬間に、暮らしは一気に不便になります。
EV(電気自動車)の電気を家で使えるV2Hがあれば、満充電のEV1台で、車種によっては数日分の電気をまかなえます。停電しても普段に近い生活を続けやすくなります。
この記事では、停電時に何日使えるか、どんな家電が動かせるか、どう備えるかを、埼玉の停電実績も交えて整理します。V2Hが自宅の停電対策としてどこまで頼れるか、判断する材料にしてください。
停電・災害のとき、V2Hがあると何ができる?
停電時にV2Hで何が変わるのか、埼玉でどのくらい停電が起きているのかを見ていきます。
停電中もEVの電気で「普段に近い暮らし」を続けられる
V2Hは、EVに貯めた電気を家へ送る設備です。停電しても、照明・冷蔵庫・テレビ・スマホの充電といった暮らしの基本を保てます。
持ち運び型のポータブル電源やモバイルバッテリーとの違いは、扱える電気の量です。EVの容量は軽EVで約20〜30kWh、普通のEVで約55〜90kWh(現行の国産車)で、家庭用蓄電池(5〜15kWh程度)を大きく上回ります。「スマホを数回充電できる」レベルではなく、家全体の電気を数日単位でまかなえます。
ポータブル電源・車のコンセント・外部給電器とV2Hの違いや選び方は「停電対策の比較」で詳しく解説しています。
V2Hの仕組みから知りたい方は、V2Hとは?仕組み・メリット・デメリットを解説した基本ページをご覧ください。
埼玉でも停電は「数年に一度」起こっている
埼玉県でも、台風や大雪による停電は数年に一度起きています。2019年は9月の台風15号、10月の台風19号と大型の台風が立て続けに関東を襲い、県内でも広く停電しました。台風15号では千葉県を中心に、復旧まで数日〜2週間以上かかった地域もあったと大きく報じられました。
停電は数時間で戻ることもあれば、災害の規模によっては数日続くこともあります。いつ復旧するか分からないからこそ、数日は自宅で電気が使える備えが役に立ちます。
この記事で分かること
- 停電時、V2Hで電気は何日使えるのか(車種・容量別)
- 停電中、実際に使える家電と使い方のイメージ
- いざという時のための、EVの充電・残量管理のコツ
- 停電対策でV2Hを選ぶときの注意点
停電時、V2Hで電気は「何日」使える?(車種・容量別)
いちばん気になるのは「結局、何日くらい電気が持つのか」でしょう。車種・容量別の目安と、その数字を読むときの前提を押さえておけば、カタログの数字に惑わされずに判断できます。ここにない車種は、V2H対応車種一覧の容量から見当がつきます。
まず知りたい「1日の電力消費量」は約10〜13kWh
給電日数を考える前提として、一般家庭が1日に使う電気は、世帯人数や季節で変わりますが、おおよそ10〜13kWhです。EVに30kWh残っていれば、単純計算で2〜3日分です。停電時は必要な家電に絞るので、節電すればさらに長く持ちます。この「1日10〜13kWh」を基準に、次の目安を見てください。
車種・容量別の給電日数の目安
代表的な車種で、満充電の場合の目安です。
現行の日産リーフなら、満充電で55kWhが約4〜4.5日分、78kWhが約6日分です。図の先代リーフ(60kWh)は約4〜5日分、(40kWh)は約3日分、三菱アウトランダーPHEV(22.7kWh)は約1.5〜2日分です。停電が数日続いても、冷蔵庫を動かしながら照明やスマホ充電を確保できるイメージです。
日数は、容量を1日の使用量で割り、放電下限と変換ロスを見込んで少なめに寄せた目安です。
容量の小さいPHEVには、エンジンで発電できる強みがあります。V2Hにつないだままではエンジンをかけられないため、電気が減ってきたらいったん接続を外し、エンジンで充電してからつなぎ直します。三菱の試算では、アウトランダーPHEVは満充電・ガソリン満タンから最大約11日分です(1日10kWhで計算・V2H機器の変換ロスは含まない。三菱自動車のFAQ)。EVかPHEVか、容量はどれくらいかで停電時の安心感は変わるため、ご自宅の使い方に合った車種を選びましょう。
「何日使える」を鵜呑みにしない3つの前提
日数の数字をそのまま信じると、「思ったより早く電気が尽きた」となりかねません。次の3つの前提を押さえておきましょう。
- 満充電が前提:上の日数はEVが満充電の場合の目安です。残量が半分なら、使える日数もおよそ半分になります
- 変換ロスと放電下限がある:家へ送るときの変換効率は定格出力時で約90%で、使う電気が少ないとさらに下がります。夜にためて昼に使うときの「往復効率60〜70%」は、満充電から家へ送る停電時には当てはまりません。カタログ容量がそのまま使えるわけではありません
- 使い方次第で大きく変わる:節電すれば長持ちし、エアコンを通常どおり使えば一気に短くなります。上の日数は「節電しながら」の前提です
放電下限は車の電池を使い切らないための設定で、ニチコンVSG3の停電時の初期設定は残量10%です。家の電気に変えるときのロスも出ます。リーフ(60kWh)が満充電でも、容量をそのまま全部は使えません。容量の数字だけで「丸ごと使える」と考えると、見込みが甘くなります。
停電中、実際に使える家電と使い方のイメージ
停電時に使える家電の目安と、1日の過ごし方を生活の場面で整理します。
少ない電力で「ずっと使える家電」と「短時間なら使える家電」
家電は消費電力の大きさで2つに分けると分かりやすくなります。小さい家電は長く使い続けられ、大きい家電は使えるものの電気の減りが早い、というイメージです。
LED照明・冷蔵庫・スマホ充電・Wi-Fiルーターは、停電が数日続いても使い続けられます。電子レンジ・ドライヤー・エアコン・IHは使えますが電気の減りが早いので、必要なときに短時間だけ使うと、限られた電気を上手に使えます。
停電時の「1日の過ごし方」をイメージしてみる
満充電のEVがある前提で、停電時の1日をイメージしてみます。冷蔵庫は動かし続けて食材の傷みを防ぎ、朝晩は照明を点け、スマホやタブレットを充電して情報を確保します。電子レンジで温かい食事をとり、暑い・寒い時期はエアコンを必要な時間だけ使う、という「普段に近い暮らし」を数日続けられるのがV2Hの安心感です。
在宅介護や小さな子ども、ペットがいる家庭では、停電中も温度管理ができることが、家族の健康と安全を守る大きな備えになります。
鈴木さおり電力を多く使う家電は「同時に使わない」のがコツ
エアコン・IH・ドライヤー・電子レンジなどを同時に使うと、機器の出力の上限を超えることがあります。大きな電力の家電は「1つずつ、短時間で」使えば、トラブルなく電気を使い続けられます。
200V家電が停電時に使えるかは、V2H機器が全負荷型か特定負荷型かで変わります。この違いは次の章で見ていきます。
全負荷型・特定負荷型で、停電時にできることはどう変わる?
停電対策でV2Hを選ぶときに避けて通れないのが、全負荷型と特定負荷型の違いです。停電時に「家のどこまで電気が使えるか」の視点で比べ、どちらが自宅に合うかを考えます。
「家じゅう使える」全負荷型と「決めた範囲だけ」の特定負荷型
全負荷型は家全体に、特定負荷型は決めておいた一部のコンセントや部屋にだけ給電します。
全負荷型は家全体に電気が回るため、どの部屋でも普段どおりに過ごせ、対応機種ならエアコンやIHといった200V家電も使えます。特定負荷型はリビングや冷蔵庫など決めた範囲だけで、使える範囲が狭いぶん、電気を重要な家電に集中させられます。
停電対策の「安心感」で選ぶなら全負荷型が有利
2019年の台風被害のように停電が長引いても、エアコンで暑さ・寒さをしのぎ、家じゅうの家電を使えるのは全負荷型です。ただし機器価格はやや高めで、分電盤の構成によっては追加工事が要ることもあります。家全体をカバーしたいか、必要な範囲に絞ってコストを抑えたいかで、選ぶタイプが変わります。
どちらを選ぶかは機器のスペック比較で判断する
どちらを選ぶかは、停電時の使い方だけでなく、定格出力・200V対応・自動切替か手動切替か・価格・保証期間など、機種ごとのスペックを合わせて判断します。スペックはメーカー・機種によって細かく異なります。2つのタイプの違いを並べると、次のとおりです。
| 比べるところ | 全負荷型 | 特定負荷型 |
|---|---|---|
| 停電時に使える範囲 | 家全体 | 決めておいた部屋・回路だけ |
| 200V家電(エアコン・IH・エコキュート) | 対応機種なら使える | 使えない |
| 機器の価格 | やや高め | 安め |
| 機種の選び方 | 主要メーカーの現行機はほぼ全負荷型。機種ごとの違いはV2H機器メーカー比較で確認 | 現行販売の機種は少ない |
いざという時のために、EVの充電・残量管理のコツ
停電したときに自動で切り替わる条件と、手動での始め方は「V2Hを入れたあとの使い方」で説明しています。
V2Hがどれだけ高性能でも、EVが空に近ければ停電時に役立ちません。ふだんの充電と残量管理が、停電対策の実力を決めます。
「ふだんから一定以上の残量をキープ」が基本
停電はいつ起こるか分かりません。だからこそ、ふだんからEVの残量を一定以上に保つことが停電対策の基本です。満充電なら数日分の電気をまかなえますが、残量が半分なら日数もおよそ半分です。
毎日満充電にする必要はありませんが、「常に半分以上は残す」と決めておくと、突然の停電に備えられます。台風の接近や大雪の予報があるときは、前もって満充電にします。
鈴木さおり深夜電力での充電が「節約」と「備え」を両立する
残量キープと節約を両立させるコツが、電気の安い深夜の充電です。時間帯別の電気料金プランを契約していれば、深夜の安い電気でEVを充電でき、日々の電気代を抑えられます。「ふだんは節約のために深夜充電し、その結果として停電にも備えられている」という状態が理想です。停電対策のためだけに無理をせず、日常の延長で備えられるのがV2Hの利点です。
弱点も知っておく:EVが出払っていると使えない
V2Hには正直に押さえておくべき弱点もあります。最大の弱点は、EVが家にないと給電できないことです。外出中に停電すれば、帰宅するまで家に電気を送れません。
日中に通勤や買い物でEVを使う家庭では、「停電したけれど車が家になかった」ということも起こりえます。停電が長引いて電気を使い切ると、近くの充電スポットで充電できない限りそれ以上は給電できません。
V2Hは万能の備えではなく、ふだんの残量管理と組み合わせてはじめて実力を発揮する設備です。停電しそうな時期は車をなるべく家に置き、満充電を保つ運用とセットで考えましょう。
停電対策でV2Hを選ぶときに知っておきたい注意点
導入してから「思っていた備えにならなかった」とならないよう、機種や業者を選ぶ前に確かめたい点です。
「停電時に何を動かしたいか」を先に決めておく
まず「停電時に家のどこまで電気を使いたいか」を決めます。家全体でエアコンも使いたいなら全負荷型、リビングと冷蔵庫が動けば十分なら特定負荷型と、目的によって選ぶタイプが変わります。
ここを決めずに業者任せにすると、「停電時にエアコンが使えなかった」「思ったより使える範囲が狭かった」というずれが起こりがちです。自宅の優先順位を先にはっきりさせておきましょう。
対応車種と容量を確認しておく
給電日数はEVの容量で大きく変わります。手持ちの車がV2Hに対応しているか、容量はどれくらいかを確かめ、これから選ぶなら、停電時の安心感を重視して容量の大きい車種も候補にします。
V2H機器とEVには相性があり、組み合わせによっては本来の性能を発揮できないこともあります。停電対策を重視するなら、車種(購入予定を含む)を業者に伝えて機器を提案してもらいましょう。
業者によって総額に差が出る
同じ機器でも、仕入れルートや営業コスト、下請け構造の違いで、業者によって総額に差が出ます。「ぼったくり」ではなく事業構造による差です。停電対策で重要な全負荷型への対応力や扱える機種、補助金申請の代行の有無も業者ごとに違い、業者によっては停電に強い構成の提案が出てこないこともあります。
1社だけの見積もりでは、その金額が高いのか妥当なのか判断できません。停電対策として本気で導入するなら、最低でも3社から見積もりを取り、価格と提案を比べてから決めましょう。
まとめ:V2Hは「数日分の安心」を備える停電対策になる
要点を整理します。
- 給電日数の目安:現行リーフ(55kWh)で約4〜4.5日分・(78kWh)で約6日分、先代リーフ(60kWh)で約4〜5日分・(40kWh)で約3日分、アウトランダーPHEV(22.7kWh)で約1.5〜2日分
- 前提条件:満充電・節電しながら使う前提。放電下限と家へ送るときの変換ロスを見込んだ目安
- 使える家電:照明・冷蔵庫・スマホ充電は長時間、エアコン・IHなど大電力家電は短時間が目安
- タイプの違い:家全体をカバーする全負荷型か、決めた範囲に絞る特定負荷型か
- 運用のコツ:ふだんから一定以上の残量をキープ。EVが出払うと使えない弱点も理解しておく
- 業者選び:同じ機器でも総額に差。停電に強い構成は業者の提案力次第
埼玉県でも台風や大雪による停電は数年に一度のペースで起きています。「いつ復旧するか分からない」不安を、「数日は自宅で電気が使える」安心に変えられるのがV2Hの価値です。停電に強い構成にできるかは機種と業者の提案で変わります。自宅に合う提案を引き出すため、まず複数社の相見積もりから始めましょう。理由と進め方は次の記事で解説しています。

停電や災害への備えは、お住まいの自治体が公開する防災情報もあわせてご確認ください。埼玉県 防災情報(埼玉県公式サイト)で、地域の停電・災害への備えを確認できます。
