「V2Hで電気代が下がる」という話と、「変換ロスがあるから得しない」という話。どちらが本当なのでしょうか。
答えは「使い方しだい」です。V2Hは電気をためて戻すたびに、3〜4割の電気が消えます。このページでは、ロスがどこで生まれるかと、電気代でいくらになるかを、東京電力の公式単価で計算します。
結論:夜にためて昼に使うと損、太陽光の余りをためると得
数値は、東京電力の公式単価(2026年10月時点)と、往復効率(ためた電気のうち戻ってくる割合)65〜70%で計算したものです。実際の往復効率は約60〜70%で、低いほど損は大きくなります。
- V2Hは、電力会社から買った電気をEVにためて家に戻すと、往復で約30〜40%が消える
- 安い夜の電気をためて昼に使っても、東京電力の時間帯別プランでは1kWh(kWhは電気の量の単位)あたり約2〜9円の損になる
- 太陽光の余った電気を売らずにためて夜に使うと、1kWhあたり約21〜28円の得になる
- V2Hを電気代の節約に使うなら、太陽光とセットで考えるのが前提
ロスはどこで生まれるか
V2Hのロスは、主に3か所で生まれます。家の電気は交流(AC)、EVの電池は直流(DC)なので、ためるときと戻すときに電気の形を変える必要があるからです。
V2HのしくみはV2Hとは?仕組みとメリット・デメリットで解説しています。
1. 充電と放電のたびに起きる変換ロス
交流と直流を変換するたびに、電気の一部が熱になって消えます。ニチコンの仕様では、放電時の変換効率は90%(定格出力時)です(ニチコン V2H 仕様)。
ためるときと戻すときの2回変換するので、変換効率が85〜90%なら、変換だけで往復約2〜3割が消える計算になります(0.85〜0.9の2乗)。
2. 充放電中に車が使う電力
充電や放電をしている間、車は電池を守る仕組みなどを動かすために数百Wの電力を使います。ニチコンの節約額の試算では、変換効率85%と「EV内部消費300W」を前提にしています(ニチコン VSG3)。
3. 使う電気が少ないときほど効率が下がる
変換効率は、定格出力(6kWなど)に近いときがいちばん高く、使う電気が少ないと下がります。ニチコンの仕様には「特に家庭での使用電力量が1kW以下の場合は効率が低下します」とあります。
冷蔵庫や待機電力だけの夜中は使う電気が数百Wしかなく、車が使う数百Wの割合が大きくなります。こうした要素を合わせると、実際の往復効率は約60〜70%になります。
電気代で計算すると:夜に買って昼に使うと1kWhあたり約2〜9円の損
往復効率が65%なら、家で1kWh使うために、電力会社から約1.54kWhを買う必要があります。得か損かは次の式で決まります。
1kWh使うたびの得 = 昼の単価 − 夜の単価 ÷ 往復効率
| 東京電力のプラン | 往復65% | 往復70% | 得になる往復効率 |
|---|---|---|---|
| スマートライフS/L | −6.5〜−9.4円 | −3.6〜−5.8円 | 77〜80%以上 |
| 夜トク8 | −5.5〜−8.3円 | −2.1〜−4.4円 | 74〜77%以上 |
| 夜トク12 | −6.5〜−9.4円 | −3.0〜−5.3円 | 75〜78%以上 |
※ 1kWh放電あたりの損得。燃料費調整(2026年11月分は▲5.33円、0円の場合も計算)と再エネ賦課金(4.18円)を昼夜とも含めています。幅は燃料費調整の違いです。
たとえばスマートライフでは、夜(1〜6時)が27.86円、昼(6〜翌1時)が35.76円です(税込・燃料費調整と賦課金を除く)。差は約8円ありますが、往復で3〜4割が消えると、昼に使う1kWhの元手は約38〜49円になり、昼の単価(賦課金などを含め約35〜40円)を上回ります。
得にするには往復効率が約77〜80%必要で、実際の60〜70%では届きません。単価は東京電力 スマートライフの公式ページで確認できます。
東京電力以外のプランで確かめる方法
他社のプランでも確かめ方は同じです。「夜の単価 ÷ 昼の単価」を計算し、その値が往復効率(0.6〜0.7)より小さければ得、大きければ損です。
多くのプランでこの値は0.7を超えます。時間帯で単価が変わらない従量電灯B・Cのプランでは、夜にためて昼に使っても節約にはなりません。
太陽光の余りをためると1kWhあたり約21〜28円の得
ロスがあっても得になるのは、ためる電気の「元手」が安いときです。太陽光で余った電気は、売っても卒FIT(太陽光の固定価格での買取期間が終わること)後は1kWhあたり8.5円にしかなりません(東京電力の再エネ買取標準プラン)。
8.5円の電気で夜に40円近い電気を買わずに済むなら、ロスがあっても大きく得をします。スマートライフで計算すると、1kWh使うたびに約21〜28円の得です(燃料費調整が0円なら約26〜28円、▲5.33円なら約21〜23円)。
卒FIT後の買取単価は東京電力の公式ページで確認できます。
年間では、太陽光5kW・標準的な家庭の条件で年約2.5〜5万円の節約になります。
FITの期間中は、売電単価で損得が変わる
FIT(固定価格買取制度)の10年間は、太陽光の認定を受けた年度の単価で売れます。この単価が高い家は、ためて使うより売るほうが得です。式は「買う単価 − 売電単価 ÷ 往復効率」で、スマートライフでは売電単価が約22〜28円のあたりが分かれ目になります。
| 太陽光の認定年度 | 売電単価(1kWh) | ためて家で1kWh使うと |
|---|---|---|
| 2016〜2017年度 | 31円・28円 | 約0〜13円の損(売るほうが得) |
| 2018〜2019年度 | 26円・24円 | 約5円の損〜約6円の得(ほぼ差なし) |
| 2020年度〜2025年9月 | 21〜15円 | 約2〜19円の得 |
| 2025年10月〜2026年度 | 24円(4年目まで)、8.3円(5〜10年目) | 4年目までは約2円の損〜約6円の得、5年目からは約22〜28円の得 |
※ 売電単価は資源エネルギー庁の公表値(太陽光10kW未満・東京電力の供給区域)です。東京電力スマートライフの単価(2026年10月時点)と往復効率65〜70%で計算しました。幅は燃料費調整と往復効率の違いです。
2020年度以降に認定を受けた家は、FITの期間中でも、余った電気をためて使うほうが得です。2017年度以前の家は卒FITまで売電を優先し、V2Hは停電への備えと卒FIT後の自家消費のために考えます。
太陽光とV2Hを組み合わせたときの節約額や、卒FIT後の考え方はV2Hと太陽光発電の組み合わせで詳しく解説しています。
田中健太
鈴木さおりロスを抑える使い方
ロスはゼロにはできませんが、使い方で影響を小さくできます。
- 太陽光の余りをためることを優先する:元手が8.5円の電気なら、ロスがあっても得になる
- 夜に買った電気をためて昼に使う設定は避ける:東京電力の時間帯別プランでは損になる(設定のしかたはV2Hを入れたあとの使い方)
- 走るための充電は、往復のロスがかからない:家に戻さず走行に使う電気は、充電時の変換ロスだけで済む
- 停電への備えは電気代とは別の価値:ロスがあっても、停電のときに家で使えること自体に意味がある
自分の家の条件で、V2Hの費用と補助、電気代の変化を試算したい方はV2Hの費用シミュレーターを使ってみてください。
まとめ:V2Hで電気代を下げるなら太陽光が前提
- V2Hは、ためて戻すまでに往復で約30〜40%の電気が消える(往復効率60〜70%)
- ロスの原因は、交流と直流の変換、充放電中に車が使う電力、使う電気が少ないときの効率低下
- 夜の安い電気をためて昼に使うと、東京電力の時間帯別プランでは1kWhあたり約2〜9円の損
- 太陽光の余りをためると、1kWhあたり約21〜28円の得。年間では約2.5〜5万円
- V2Hの価値は、電気代よりも停電への備えと太陽光の自家消費にある
※ 損得の数値は、東京電力の公式単価(2026年10月時点)と往復効率65〜70%で計算したものです。他社の料金プランでは単価が異なります。太陽光併用の上限側は、日中に車が自宅にあり余った電気をためられる家庭の場合です。
太陽光とV2Hの見積もりを比べるなら
V2Hで電気代を下げたいなら、太陽光と一緒に考えるのが近道です。グリエネ(グリーンエネルギーナビ)は、全国450社の販売施工会社から、条件に合う会社を最大5社まで紹介してもらえる無料の一括見積もりサービスです。太陽光と蓄電池をあわせて見積もりを依頼できます。
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